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天皇陛下と防衛省・自衛隊 ―平成を回顧して
防研研究幹事 庄司潤一郎氏

2019年4月26日更新

 九州北部豪雨で自衛隊の災派部隊を指揮した5施設団長兼小郡駐屯地司令の秋葉瑞穂陸将補(当時)=左=にねぎらいの言葉を掛けられる天皇皇后両陛下(平成29年10月27日、福岡県朝倉市で)=福岡県提供


 庄司 潤一郎(しょうじ・じゅんいちろう)氏
 1958(昭和33)年東京生まれ。筑波大学社会学類卒、同大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。防研戦史研究センター長などを経て現職。専攻は近代日本軍事・政治外交史、歴史認識問題。天皇皇后両陛下の2005(平成17)年6月のサイパン以来、パラオ、フィリピン、ベトナム御訪問の「慰霊の旅」に際し、事前に御所で戦史に関する御説明を担当。06(平成18)年から10(平成22)年まで「日中歴史共同研究」近現代史分科会委員。主な著書に、いずれも共著で『歴史と和解』(東京大学出版会、2011年)、『検証太平洋戦争とその戦略』全3巻(中央公論新社、2013年)、『決定版日中戦争』(新潮社刊、2018年)などがある。

時代を通して関係変化 陛下のご活動に多大な貢献

はじめに

 来たる4月末日をもって、天皇陛下は御譲位され、「平成の御世」は終わりを迎える。一方、陛下と防衛省・自衛隊の関わりについては、あまり語られることはない。そこで本稿では、平成における両者の関係について述べたい。

 天皇の行為は「国事行為」「公的行為」「その他の行為」と大きく三分類されている。「国事行為」は憲法により定められた国家機関の立場として行う行為であり、「公的行為」は「国事行為」と異なり、憲法に明文化されていないものの、象徴としての地位に基づいて行われるものである。

 恒常的な「公的行為」における自衛隊の関わりは、まず、国王、大統領など外国の賓客が来日された折の歓迎式典である。式典では、自衛隊による儀仗、と列および礼砲が行われる(自衛隊法第6条、自衛隊法施行規則第2章)。

 ちなみに、両陛下の地方行幸啓の際にも、自衛隊部隊等が所在する市町村やその近傍を通過する時に、自衛隊員によると列が実施されることがある。最近では、昨年3月の日本最西端の与那国島御訪問に際して、自衛隊員のと列が行われた。

 第二に、海外御訪問で、往復には空自が運航する政府専用機が使用される(自衛隊法第105条の5)。政府専用機は平成5年2月から運用が開始され、空自の特別航空輸送隊(千歳基地)に所属している。両陛下の海外御訪問では16回運航された。第1回は平成5年9月のヨーロッパ諸国御訪問(イタリア・ベルギー・ドイツ)、最後は平成29年2〜3月のベトナム御訪問である。

 第三に、高級幹部会同参加者の拝謁(天皇陛下、定期的、平成では少なくとも19回)、国際平和協力隊(PKO)の御接見(両陛下、不定期、同10回)で、いずれも宮殿において挙行されている。

 自衛隊幹部との会見は、昭和35年11月2日の自衛隊記念日に当たり、昭和天皇が陸上自衛隊各方面総監、海上・航空自衛隊幹部等20名が皇居において御会釈を賜ったのが初めてである。38年11月には「御会釈」から「拝謁」としての取り扱いに格上げされ、翌39年9月16日、自衛隊高級幹部会同に参会する陸海空自衛隊の主要幹部の拝謁を受けられ、その後ほぼ毎年行われた(『昭和天皇実録』)。この慣例は、平成に入っても引き継がれたのである。

 自衛隊の国際協力活動は、まさに平成に入った平成3年の湾岸戦争における海自掃海艇の派遣を嚆矢(こうし)としており、これまで海外に派遣された自衛隊員は延べ約5万7460人に上っている。5年11月、カンボジアの国連平和維持活動に参加した自衛隊員などが赤坂御所に招かれ、活動内容の報告の後、陛下から「ご苦労でした」とのお言葉をいただいた。これまで国際貢献では、青年海外協力隊、国際緊急援助隊の隊員らが招かれていたが、自衛隊員は初めてであった(『朝雲新聞』5年12月2日)。

 また、18年12月、両陛下はイラク人道復興支援特別措置法などに基づきインド洋やイラクに派遣されていた自衛隊員などに対して接見され、「厳しい環境のもとでの任務の遂行にはさまざまな苦労があったことと察します。……精神的にもずいぶん大変だったでしょう」と労われた(『読売新聞』18年12月15日)。

 25年2月、中東ゴラン高原、中米のハイチ、アフリカの南スーダン、東南アジアの東ティモールに派遣された延べ1900人の代表168人と懇談、天皇陛下は、「危険を伴う厳しい環境の中で、さまざまな計り知れない苦労があったことと察しています。みなさんの尽力により、これら地域の平和と安寧が保たれたことは、誠に意義深いことであったと思います」と述べられた(『朝日新聞』25年2月14日)。

 一方、「その他の行為」として行われている各省庁トップによる御進講においても、防衛省(防衛庁)の事務次官は、天皇陛下に対して、日本の安全保障政策について延べ7回御進講を実施している。


「即位の礼」と自衛隊

 陛下の即位に際して、2年11月12日、平成最大の儀式である「即位の礼」が「国事行為」として挙行され、元首級70人含む158カ国、2国際機関から、内外合わせて約2200人が参列した。その際、自衛隊は「即位礼正殿の儀」において礼砲、「祝賀御列の儀」において儀仗(皇居正門〜赤坂御所正門)、およびと列・奏楽(赤坂御所までの途上)を行い、陸海空自衛隊員、防衛大学校、防衛医科大学校各学生の約1250名が参加した。

 また、成田空港と都心との間の国賓等の輸送(自衛隊法第105条の5)が行われ、陸自ヘリ(V107、AS323Lスーパーピューマ)、海自・空自輸送機(YS11)合計20機が従事、11日間(2年11月8日〜18日)に延べ1000名以上を輸送したのである。

 さらに、「即位の礼」に係る「高御座」と「御帳台」が、京都御所から皇居へ、陸自のヘリ(CH47)によって空輸され、式典当日、海自の在泊艦艇は祝賀の意を表して「満艦飾」を行った(防衛庁編『防衛白書 平成3年版』大蔵省印刷局。『朝雲新聞』2年11月15・22日)。


被災地お見舞い

 平成を象徴する陛下の御活動として、二つの祈り、すなわち「被災地お見舞い」と「慰霊の旅」が挙げられる。平成時代は、大規模な自然災害が頻発、自衛隊も再三にわたって災害派遣を実施してきた。平成における派遣実績(平成元年〜28年)は、1万9814件、人員は392万2432人となっており、割合としては昭和を上回っている。その結果、災害派遣を通じて自衛隊の活動への理解は深まり、世論調査では「自衛隊を信頼している」と回答した国民は、5年には6%であったが、30年には74%に上昇、最も信頼される公共機関となった(『読売新聞』平成31年4月3日)。

 その際、救援・被害状況の御説明を3回行っている。平成7年2月10日、陛下に対して事務次官と統合幕僚会議議長が、阪神・淡路大震災被災地の救助、救援等の状況について御説明を実施した。自衛隊の災害派遣で、制服トップの統合幕僚会議議長が天皇にお会いする機会はあったものの、御説明を行ったのは初めてのことであった(『産経新聞』平成7年2月11日)。

 昭和天皇は、宮内庁次長であった林敬三警察予備隊警察監(のち、警察予備隊総隊総監、保安庁第1幕僚長、統合幕僚会議議長=陸将)からは、頻繁に御進講を受けられていたが、それは例外であった。

 ついで、23年4月1日、両陛下に対して防衛大臣と統合幕僚長が、東日本大震災と福島原子力発電所に対する自衛隊の活動状況について、23年8月3日には両陛下に対して陸自東北方面総監(統合任務部隊指揮官)が、東日本大震災に対する自衛隊の活動状況について御説明を行っている。

 特に、被災地お見舞いに際しての御移動に自衛隊機やヘリが使用された。嚆矢となったのは、象徴的な最初の被災地お見舞いとしてしばしば紹介される3年7月10日の雲仙・普賢岳噴火のお見舞いである。以降、延べ11回にわたって、自衛隊が被災地お見舞いにおける御移動に参画したのであった。

 ちなみに、「天皇」というお立場の方が自衛隊のヘリを初めて使用されたのは、・・・

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