『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える安保・防衛問題の専門紙です。

TOPコラム >朝雲寸言


 朝雲寸言

 イラク大統領フセインの銅像が引き倒された時、大勢の市民が駆け寄って積年の恨みとばかり足蹴(あしげ)にする様子が報道されたが、それとよく似た光景が米国でも演じられた。白人至上主義に端を発した騒動だ。

 倒されたのは南北戦争時の南部連合の英雄らしいが、250年もたって、足蹴にするほどの憎悪はなぜだろう。米国中で現在、南部連合の銅像撤去の是非を巡る論争が続いているようだが、そうした銅像は全米に700体以上あるという。

 その象徴のような存在が南軍を率いた名将ロバート・リー将軍の銅像だが、彼はアトランタ近郊の高さ500メートル余の垂直の岩山に、南部連合大統領J・デーヴィスや盟友T・ジャクソン将軍とともに、50メートルプールを横にしたような巨大なレリーフとしても刻まれている。

 仮にそれまでも削ったら歴史の抹消だが、幸い米国世論の大勢は銅像撤去に批判的らしい。南北戦争は南部諸州が奴隷制維持のため起こした恥ずべき内戦だからというのが撤去派の主張のようだが、その厳しい試練を経て今日の強大な合衆国があるのも動かし難い歴史だ。

 為政者や軍人の銅像は後世、評価が逆転してとんでもない目にあう恐れもあるが、我が国では旅順港閉塞(へいそく)作戦の広瀬武夫中佐と杉野孫七兵曹長が戦後なぜか撤去されたのを除くと、維新の元勲も乃木希典や東郷平八郎もみな健在だ。こうした銅像は良くも悪くも、歴史を語り続けている。

(2017年9月14日付『朝雲』より)

 

 

朝雲新聞社の本

自衛隊装備年鑑2017-2018

アジアの
安全保障
2017-2018

平成29年版
防衛ハンドブック


『朝雲』縮刷版
2016


2017自衛隊手帳
わかる
平和安全法制

自衛隊総合戦力
ガイド

当ホームページに掲載の記事・写真・図表の無断転載を禁じます。すべての内容は著作権法によって保護されています。