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 朝雲寸言

 東京の地下鉄にサリンが撒(ま)かれ自衛隊が出動したころの話だ。防衛庁詰めだったある記者が統合幕僚会議の広報担当の1佐から呼び出された。恐る恐る出向いた記者に、1佐は「これ、いいですね」とその記者の記事を差し出した。

 当時は今と違い自衛隊を冷ややかに見る向きも国内には根強くあり、化学兵器を持っていた旧日本軍と、純粋に防護目的で備える自衛隊を意図的に重ねて見せるかのような意地の悪い記事も散見された。そんな中、1佐は化学防護隊の教育資料を「化学戦マニュアル」でなく「化学防護マニュアル」と書いたその記事を見つけ、記者に謝意を伝えたのだった。記者は「自衛隊はこんなささやかなことで喜ぶのか」と驚くと同時に、当時の自衛隊員の置かれた状況を知り「記事は公正に書かねばならない」と心がけるようになったという。

 近年、防衛省・自衛隊の広報の技量は高まり、こう情報発信すればこんな記事が出るといったノウハウも蓄積されているようにみえる。ただ小手先の技に走ったり、記者などいかようにもコントロールできるのだと過信したりするのは禁物だ。

 広報で大事なのは、日本の守りのありようを国民に正しく理解してもらい、自衛隊と国民、記者たちが「同じ方向を向いて一緒に考えられる環境」を作ることにあるように思う。短期的な成果を急がず、悩みも格好の悪いところも時には打ち明けられる度量を持てればと願う。

(2018年11月8日付『朝雲』より)

 

 

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