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 朝雲寸言

 1989年6月、抗議する学生たちを中国政府が武力で制圧する天安門事件が起きた。市街戦状態の北京から日本企業駐在員や帯同家族ら約3500人の邦人を救出すべく、日本政府はチャーター機の派遣を決定。危険を知りながらいち早く救援機を北京に送ったのは全日本空輸だった。

 第一便が北京に到着すると、命からがら逃げ延びて来た邦人たちは乗務員に涙ながらに感謝の言葉を伝えたという。「弊社が当時あの仕事を引き受けたことを誇りに思います」と熱く語る全日空社員は多い。新型肺炎が猛威を振るう武漢へのチャーター便に応じたのも同社だった。武漢便の実績があったことも選ばれた理由というが、社員研修などの場で航空会社の社会的責務をきちんと継承していることも派遣の背景にはあるのだろう。

 資源に乏しい日本がここまで繁栄できた理由の一つに、貿易や現地生産事業などでの在外邦人たちの奮闘がある。彼らが窮地に陥った時、素早く救いの手を差し伸べられない国家や社会は「恩知らず」の誹(そし)りを免れない。

 海賊が跋扈(ばっこ)するソマリア沖に護衛艦と哨戒機が到着した時、日本の商船隊に安堵の空気が広がった。きな臭さが消えない中東方面へいま再び護衛艦が向かい、ほっとしている人々も多いことだろう。「派遣反対」と叫ぶ声も聞こえるが、国際的にみれば豊かな暮らしを日本人ができる理由について、時には思いを致したいものである。

(2020年2月13日付『朝雲』より)

 

 

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