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拉致解決力あわせる時

小泉訪朝15年
 後に二松学舎大学長を務める浦野匡彦氏は敗戦後、郷里群馬で引き揚げ者の支援に携わる。

 荒廃の中にあっても、子供たちには誇るべき郷土の歴史や偉人を知ってほしい。そうした願いから生まれたのが上毛かるたである。今年、70年を迎えた。

 象徴的な読み札は、「つる舞う形の群馬県」「力あわせる二百万」であろうか。特定の名所や個人ではなく、群馬県全体、県民全体を主題としている。

 浦野氏の長女、西片恭子さんの『上毛かるたのこころ』(中央公論事業出版)によると、地図上の群馬県の形をツルに例える発想は、明治時代の唱歌にあったという。戦中には、ワシやタカとも表現された。

 読み札には、ツルのように堂々と羽ばたけ、という期待と、もう一つ隠された意図があった。

 シベリアに抑留された同胞を救う決意である。約57万の日本軍兵士らが連行され、3度目の冬を迎えようとしていた。

 連合国軍総司令部(GHQ)の目は厳しい。かるた作成という文化事業で、正面からソ連を批判することはできない。

 「祖国日本は君等を見捨てない。せめて渡り鳥鶴に心を託し一歩でも二歩でも南下してほしい。必ず救出する」

 西片さんは、その誓いを込めた札だと記す。

 鳥のように、自由に空を飛べればどんなに良いか。「飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」という嘆きは、時代や国を問わないものだろう。

 「イムジン河」という歌がある。

 北朝鮮と韓国の軍事境界線地帯を流れるイムジン河。鳥なら自由に越えていけるのに……と、望郷と半島統一の願いを込めた曲である。

 拉致被害者、蓮池薫さんはかつて、北朝鮮の地でその歌を聴き、望郷の念に駆られた。

 子供にも恵まれ、北朝鮮で生きていかねばならない。日本に帰りたいと口にすることはできず、ギターを手に、ただその曲を歌ったという。

 被害者の帰国につながった小泉首相の訪朝から17日で15年となる。

 小泉氏は訪朝前日、東京・東五反田にあった仮の首相公邸にこもった。「イムジン河」のCDを聞き、歌詞をじっくり読んだという。

 北朝鮮に残る拉致被害者は今も、本当の気持ちを周囲に隠しながら、日本の土を踏む希望を捨てずにいるはずである。一方、被害者家族には、核ミサイルの脅威の前に、拉致問題への関心低下を危惧する声もある。

 核、ミサイル、拉致。どの問題も置き去りにしないという政府の方針は理にかなっている。

 北朝鮮がまともな国になれば、日朝平壌宣言に沿って全面的に国造りに協力する。そうでなければ協力の余地はない。

 被害者家族の高齢化が進む。必ず救出する。その決意を胸に、国際社会とともに圧力をかけなければならない。力をあわせる時である。

宮原 三郎(政治評論家)

 

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