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避けるべき「政治化」

大型ハリケーン
 8月25日に米南部テキサス州に上陸した大型ハリケーン「ハービー」は、記録的豪雨で深刻な洪水被害を引き起こした。26日に熱帯性低気圧になった後、ルイジアナ州に再上陸し、両州の州境を中心に大雨が続いた。

 テキサス州では約30人が死亡、約3万3000人が緊急避難。米第4の都市ヒューストンも洪水に見舞われ、被害は同州だけで既に750億ドルに達したもよう。

 数日間、テレビ3台をつけっ放しにして、ニュース専門局が伝える現地情報をウオッチしていたが、気になるのは、この問題を「反トランプ大統領」の材料にしようとする一部メディアの姿勢だ。

 大統領の29日現地視察が決まると、CNN―TVは同日、オバマ前政権で国務省報道官だったサキ氏に電話し、「トランプ氏がテキサス入りするのは早すぎる」「地元当局が救援、復旧作業の最中、なぜ今日行くのか理解しがたい」とコメントさせた。

 同日のCBS「ジス・モーニング」に招かれたサンダース上院議員も「大統領のテキサス訪問は多分早すぎるだろう。今は復興作業に全力を挙げるべきだ」と述べた。

 2005年8月にハリケーン「カトリーナ」がルイジアナ州を襲った際、当時のブッシュ大統領は現地入りせず、批判された。

 この一件も実は、「曲解」がまかり通っている。ブッシュ氏がニューオーリンズ入りしなかったのは(1)使用できる滑走路が一本で、緊急物資を運ぶ航空機で満杯だった(2)ヘリコプターを使うにも、ヘリ全機が救援任務中だった――などによる。

 「早すぎる」と批判するなら、一体いつだったらいいのか、ご教示願いたいところで、ハービー上陸地点に近い同州コーパスクリスティの消防署前で市民を激励した大統領は、集まった被災者らの大歓声を受けていた。

 ワシントン出発の際も、同行のメラニア夫人がハイヒール姿だった点を問題視したが、テキサスに降り立った時はテニスシューズ。機内で履き替えるに決まっているだろうに、「ハイヒール」だけでコラム1本に仕上げる(「ワシントン・ポスト」など)神経も凄い。

 トランプ氏のカーキ色のズボン姿も「全く不適切」だそうだが、ハリケーン「サンディ」(12年)の時のオバマ大統領も同じ姿で視察した。

 こんな調子だから市民の反発も出る。29日昼のCNNで印象的なシーンがあった。ヒューストンの避難所で、リポーターが若い黒人の母親にマイクを向けた。母親は洪水で36時間、家に閉じ込められ、やっと脱出してガソリンスタンドまで歩き、そこから避難所に運ばれてきたという。

 説明をするうち感極まった母親は「二人の子供に食べ物を与えるため、深さ4フィートの水の中を歩き回った。あなたはここに座っていて、人々の最悪の時に顔にマイクを突き付けてインタビューしようとするのか?」と聞いた。

 一体、「早すぎる」のは誰なのか? そして今、新たなハリケーン「イルマ」が迫っている。

草野 徹(外交評論家)

 

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