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「首相候補未定」の意味

衆院選公示
 しょせん、アベとアバの戦い、政策も大して変わらないじゃないか。

 10日公示された衆院選に、政界でこんな軽口が広がっている。

 スウェーデンのポップグループABBA(アバ)ではなく、「エニバディ・バット・アベ」の頭文字を取ってABA。首相候補が不明確な希望の党は「安倍首相以外なら誰でも」ということか、というわけである。

 衆院解散に合わせて結党した希望の党は、代表の小池百合子東京都知事が出馬せず、選挙後の首相指名選挙にどう臨むか、はっきりさせないまま選挙戦に入った。他党は、「無責任だ」と批判している。

 小池氏の出馬を求める声は内部にもあった。民進党の前原代表は出馬を強く要請したが、小池氏は「最初から、私の出馬はない」と断った。

 小池、前原両氏はともに日本新党出身だが、その後は別の道を歩んだ。政権交代の筋論を唱える前原氏に対し、現実主義に立つ小池氏の戦略はおのずと異なる。

 2大政党が政策のパッケージと首相候補を明示し、小選挙区で「1対1」で争う。かつての中選挙区制と違い、事実上、首相と政策を有権者が直接選ぶことになる。

 1990年代の政治改革以降、前原氏らが目指してきた「政権交代可能な2大政党制」は、こうしたイメージである。

 2大政党は、米国や英国のように、外交や安全保障の基本政策に大きな違いがないことが望ましい。一方の党が日米安全保障条約廃棄や自衛隊違憲論を唱えるようでは、政権交代のたびに国の根本が変わりかねない。

 民進党の大部分が希望の党に合流し、左派は離脱した。希望の党は、外交・安保で自民党と違いが少ない。「政権交代のプラットホーム」(前原氏)に近づいたのは間違いない。

 しかし、理念が現実にそぐわない面も多い。

 共産・立憲民主・社民各党による「第3極」が形成され、小選挙区は「1対1」の構図とならなかった。

 もともと、参院は自民党が圧倒的な議席を持つ。政権に就こうと思えば、いずれ他党と連携しなければならないのは、小池氏が出馬しようとしまいと同じことである。

 それなら「曖昧戦略」に徹した方がいい。小池氏はそう判断したのだろう。首相指名選挙で誰に投票するかを再三問われても、「選挙結果を見て判断する」と繰り返している。

 希望の党は、公明党や日本維新の会に加え、「ポスト安倍」候補とされる自民党の石破茂・元幹事長や野田聖子総務相の選挙区でも、対立候補の擁立を見送った。

 与党が過半数割れした場合、連携は可能だ、というメッセージとも読める。民進党出身者がその時、どう行動するかも問われよう。

 小池氏の現実主義と、前原氏の理念が交わり、アバのハーモニーを奏でられるだろうか。

宮原 三郎(政治評論家)

 

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