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カナダ、北の脅威で覚醒

ミサイル防衛
 ミサイル攻撃への防衛に関し「他人事」のように米国任せできたカナダの姿勢が変化してきた。北朝鮮情勢を機に、米国のミサイル防衛への参加を検討し始めたのだ。

 同国下院国防委員会で9月14日、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のピエール・サン・アマン副司令官(カナダ空軍中将)が証言した。

 NORADは米加両国の航空・宇宙に関して、危機の早期発見を目指す連合防衛組織。司令部は米コロラド州コロラドスプリングズにある。

 同副司令官は、北朝鮮のミサイル攻撃があった場合、「米国の政策はカナダを防衛することではない。われわれはコロラドスプリングズでそう言われている」と述べた。

 同国ではこれまで、ミサイル防衛は中立性を脅かすとの反対意見が国家安全保障の懸念を上回ってきた。また、万一の際はNORADと北大西洋条約機構(NATO)に守られるのを当然視してきた。だが、NATOの相互防衛条項は攻撃があった後に加盟国に行動を求めているものの、集団自衛の問題を国連憲章に曖昧に委ねている。

 NORADも「監視」だけが任務で、ミサイルを迎撃するかどうかの決定は当事国次第だ。

 歴史を振り返ると、ミサイル防衛がまだ初期の1985年、レーガン米大統領はマルルーニー・カナダ首相に戦略防衛構想(SDI)への参加を呼び掛けたが、返答は「ノー」。参加すれば、冷戦下で米ソの仲介役としての役割を害するとの説明だった。

 次は2003年初め、ブッシュ大統領(息子)がマーティン・カナダ首相に弾道ミサイル防衛(BMD)への参加を呼び掛けた。再び答えは「ノー」。国民の反対と議会の不支持を理由に挙げた。

 二例とも、「ミサイル防衛は地政学上の安定を脅かす」が最大の反対理由。――ある国がミサイル攻撃に備えれば、爆発しやすい国(1980年代はソ連、現在は北朝鮮、イラン)は安保上の不安を感じ、攻撃の可能性が増す、という論理である。

 しかし、北朝鮮によるミサイル危機で状況は激変した。カナダ国民も北朝鮮問題の危険性に目をつぶってはいなくなった。議会が公聴会を開いてNORAD副司令官らの証言を求めたのはその証明だ。

 マニトバ大学安全保障情報センターのシャロン所長も同公聴会で、「ミサイル防衛の費用の大半を米国が払うと期待し続けるのは賢明かどうか」と指摘し、研究開発に寄付することを提案した。

 「ずっと反対し、いざ不安になったら参加」と多くの米国人が持つ「ただ乗り」批判の心情を理解しているようだ。

 実は、サン・アマン副司令官の証言も「半分だけ」正しい。ミサイル攻撃の際、米国はカナダを守る義務はないが、何かの行動を「求められる」のと、実際に「行う」のとは大きく違う。

 証言後、マティス米国防長官が「われわれは彼らを守る」と強調、カナダ国民との長期の友好関係を再確認した通りだろう。

草野 徹(外交評論家)

 

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