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大国の主導権争い続く

国際情勢展望
 日本では平成の時代が終わる今年は2010年代を締めくくる年でもある。10年前の2009年には米国で「変革」(チェンジ)を掲げるオバマ政権が誕生したが、その前年9月に起きたリーマン・ショック(米国発の金融危機)によって世界経済が深刻なリスクにさらされ、米国の新政権が主導して国際的な政策協調が模索されたことはまだ記憶に新しい。10年ひと昔と言うが、そうした国際的政策協調の枠組みや従来の世界秩序はこの間、米国に次ぐ経済大国となった共産党一党支配の中国の急速な台頭に加え、「米国第一主義」を掲げる2年前のトランプ米政権の誕生などによって一転して揺らいでいる。

 大きな時代の変革期に差し掛かっている今年の国際情勢を展望すると、技術覇権をめぐって新しい冷戦とも呼ばれる波乱含みの米中両大国の関係や、5年前のウクライナ危機以降、改善の糸口が見えない米ロ関係といった大国同士の主導権争いを背景に、その余波を受けて主要地域間の多国間関係や世界各地の紛争も緊張含みの展開が続きそうだ。

 地域情勢に目を向ければ、昨年6月に初めて実現した米朝首脳会談で大枠の合意をみた北朝鮮非核化の取り組みは双方の政治的思惑の違いもあってこう着状態が続き、近く開催される方向の米朝首脳による第2回会談の行方が注目点となる。また、米欧などの主要国との間でまとまったイラン核合意からの一方的離脱に踏み切ったトランプ政権による対イラン強硬政策の今後の展開や、アサド政権が軍事的優位を固めたシリア内戦の処理策をめぐる周辺関係国の駆け引きも、不安定な中東情勢の行方を占う上で目が離せない。

 いずれにせよ、2年前のトランプ政権発足後、同盟国との関係を犠牲にしてでも公約の「米国第一」の外交・安保・通商政策を追求しようとするトランプ大統領の一挙手一投足によって、国際秩序の枠組みが揺さぶられる構図は強まりこそすれ、弱まる兆しはうかがえない。1年後に本格化する米大統領選で再選を目指すトランプ氏にとって、先の中間選挙での「トランプ共和党の善戦」は、同氏自身、過去2年の政権運営に対する米国民からの一定の評価と解釈でき、民主党陣営の有力な対抗馬不在と相まって再選戦略への手ごたえを感じているに違いないからだ。

 昨年末には、ホワイトハウスでの規律を重んじたケリー大統領首席補佐官や同盟国との関係を重視したマティス国防長官といったトランプ政権内の現実主義派・国際協調派の重鎮が相次いで更迭され、後任に起用された側近の顔ぶれを見る限り、トランプ大統領による政権運営はますます独善的で党派対決色の強いものになっていく公算が大きい。

 日本は年明け以降の各国首脳との会談や先進7カ国(G7)、6月に大阪で開催する主要20カ国・地域(G20)などの会議で、世界経済をリスクにさらす米中両国の対立を緩和させる議論を主導する責任があるのではないか。米国の緊密な同盟国として、孤立化の姿勢を強める米国と主要関係国の仲介もわが国の重要な役回りとなろう。

伊藤 努(外交評論家)

 

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