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現地式典に大統領欠席

D-デイ75周年
 今年の6月6日は、第2次世界大戦で連合軍がドイツ軍への本格的反攻に転じたノルマンディー上陸作戦の開始(D―デイ)から75周年に当たる。

 しかし、北フランスのノルマンディー海岸で同日開催された国際的記念式典に、マクロン仏大統領は出席しなかった。

 「大統領はD―デイの国際的記念式典には、60周年、70周年という端数のない年にのみ参加する」(仏大統領府)との説明だ。

 だが、反ドイツの第2戦線を開き、ナチス・ドイツ撃滅、欧州解放という推移を振り返れば、「D―デイ」は果たしてその程度のものなのだろうか?

 ドイツ防衛軍総司令官だったロンメル元帥が約1カ月半前、「上陸後の24時間が帰趨を決する。連合軍にとってもドイツ軍にとっても、最も長い一日になる」と予知した通り、その日だけで4400人以上の連合軍兵士が死亡する激戦になった。

 仏で議員が同大統領に「深い失望」を表明し、「復員軍人への侮辱」と怒りの声が上がったのも当然か。同作戦に参加した兵士の老齢を思えば、「今年が彼らの存命中の最後の主要式典になるかもしれないのに」という意見には同感する。

 察するに、1977年生まれのマクロン氏にとっては、「D―デイ」はもう古代史に近い印象なのかもしれない。同作戦を記念することより、最近はドイツとの同盟維持により関心がある感じだ。

 5年前の2014年に開かれたD―デイ70周年記念式典の際は、オバマ米大統領が大きな話題になった。

 会場でのオバマ氏はいかにも退屈そうな表情で、チューインガムをかんでいた。その姿が式典中継のテレビカメラにばっちり捉えられ、視聴者から直ちに、「フランス国歌が演奏されている最中に恥ずべき行為」などの批判が起きた。

 世界の指導者、主要参列者らが、死者に敬意を表し、式典の荘厳さに身を置いている中、なぜ米大統領だけがチューインガムなのか。これがトランプ氏だったら、「国辱」どころか、「生きている資格」すら問われかねないところだが。

 やるせないエピソードの「解毒剤」として、1984年6月6日、D―デイ40周年記念式典でのレーガン米大統領の演説の一部を――。

 レーガン氏は最大の激戦地オック岬に立った。ドイツ軍の砲弾の雨の中、米降下部隊225人が海岸から30メールの絶壁をよじ登り、生き残ったのは僅か90人という文字通りの死闘が演じられた場所だった。

 「レンジャー部隊が崖の上を見上げると、今まさに手投げ弾を投げおろそうとしている敵兵がそこにいた。しかし、一人が崖から落ちても次の兵士が、次が落ちてもまたその次の兵士が崖を登り続け、ついに頂上を確保し、進撃した。彼らはこうして民主主義を守ったのである」

 当時のニュース映像を何度見ても胸にじんとくる場面で、真のリーダーの姿がここにある。

草野 徹(外交評論家)

 

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