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驕り排しレガシー築け

安倍政権再始動
 未踏の領域が見えてきた。いっそう気を引き締めて政権運営にあたらねばならない。

 参院選に勝利した安倍政権が、秋の臨時国会に向けて再始動した。

 安倍首相の通算在職日数は、8月24日に佐藤栄作を超えて戦後最長を更新した。11月19日に通算2886日となり、歴代最長の桂太郎に並ぶことになる。

 10月には消費税率が10%に引き上げられる。少子高齢化社会の社会保障財源を安定的に確保するため、消費増税を2回にわたって実現した功績は大きい。

 集団的自衛権行使の限定容認、安全保障関連法の制定など、従来の内閣が手をつけられなかった重要課題にも踏み込んだ。

 これらの成果は、1強と評されるほど安定した政権基盤が可能にしたものだ。内閣支持率が低下する局面もあったが、巧みな選挙戦略も功を奏し、国政選挙に6連勝した。

 欧米では、ポピュリズム(大衆迎合主義)的なリーダーや政党が支持を集め、社会の分断が進む。長期政権を維持する安倍首相に対して、自由で民主的な世界秩序を守る役割を期待する声さえ出ている。

 首相の頭をよぎるのは、政権のレガシー(政治的遺産)をいかに築き上げるかであろう。

 日朝国交正常化、日露平和条約締結、そして憲法改正。戦後日本にとって、未解決のまま残された大きな課題である。無論、いずれも容易に実現できるものではない。

 相手のある外交交渉、国民投票で決まる憲法改正。法律の制定や行政措置とは異なり、「安倍1強」「自民1強」がどれほど強化されようと、それだけでは成し遂げられない。

 首相は日朝首脳会談について、「条件をつけずに金正恩委員長と会って、虚心坦懐に話をしたい」と呼びかけている。

 日露関係についても、首相は今月、プーチン大統領と27回目の首脳会談を行い、交渉を継続することで一致した。

 日朝、日露ともに、成果を急ぐあまり、無原則に譲歩することがあってはならない。拉致・核・ミサイルの包括的解決、北方領土問題の前進。これらの原則を堅持しつつ、それ以外は柔軟に対応する態度が求められる。

 こうした姿勢は、国会での憲法論議でも必要となる。自民党は4項目の改憲案をまとめている。その核心は、自衛隊の根拠規定明記であろう。それ以外の項目は、他党の主張に譲る度量がなければまとまるまい。

 桂太郎は、にこにこ笑ってポンと背中をたたくことから「ニコポン宰相」として愛された。だが、やがて慢心し、明治天皇から「桂の大天狗」と評されたという。

 長期政権には驕(おご)りが生じがちで、国民には飽きも出てくる。

 首相はもちろん、全閣僚が慢心を排し、丁寧な政権運営を心がける。それが"歴代最長政権"にふさわしいレガシーを残すことにつながろう。

宮原 三郎(政治評論家)

 

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