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民主の「バイデン」問題

大統領選候補
 2020年の米大統領選挙に向け、民主党では一時は20人以上いた立候補者から最近、数人が脱落した。しかし、難問は残る。「バイデン(前副大統領)氏をどうするか」である。

 同氏の長年の「失言」「放言」「虚言」をまとめれば、本一冊など簡単に出来上がる。この性癖の理由は可能性ふたつ。思考力が伴わないか、道義心に欠けるか。どちらにしても、世界最強国のトップには不適格だろう。

 最新の例を一つ。同氏は8月下旬、ニューハンプシャー州での遊説で、副大統領当時の感動的エピソードを披露した。

 ――軍が「アフガニスタンのクナール州に飛んでほしい」と頼んできた。年配の海軍大佐に銀星勲章を授与するためだ。現地の危険は承知だ。「副大統領が死んでも代わりがいるが、兵士の命をこれ以上失うことはできない」。

 件(くだん)の大佐は、敵側の砲火の中、ザイルを使って約20メートル岸壁を降り、戦友の遺体を回収したのだった。「胸に勲章をつける時、彼は言った。『こんなものは欲しくありません。お願いです、つけないでください。彼は死んだ、あいつは死んだんだ!』」。同氏はここで少し間を置き、「以上はすべて真実だ」――。

 兵士の勲功を称えに危険な地域へ赴く勇気、胸を打つヒロイズム、何という感動。

 しかし、『ワシントン・ポスト』紙の調査で「真実」が明らかになる。複数の出来事をごた混ぜにして一つの物語を作ったようなのだ。

 バイデン氏がクナール州に行ったのは08年。まだ上院議員で副大統領ではない。砲火を潜り抜けて仲間を救おうとしたのは、20歳の陸軍のスペシャリストで、年配の海軍大佐ではない。彼は14年、ホワイトハウスでオバマ大統領から名誉勲章を受けた。同氏が現地で胸に銀星勲章などあり得ない。

 同紙によれば、「問題の時期、兵士の英雄的行為、勲章の種類、軍の区別、受賞者の階級、すべて間違っている」という。

 数多の中から、象徴的な例をもう一つ。1972年暮れ、バイデン夫人の運転する乗用車が交差点で大型トラックと衝突し、夫人と乗っていた娘が死亡した。

 同氏は、トラック運転手が「酒を飲んで運転していた」と触れ回った。しかし、運転手の家族は「飲酒」を否定し、警察の調べでも、飲酒運転の事実は出てこなかった。全くのデマだった。

 夫人らの交通事故死や兵士のヒロイックな行動で嘘をつくのはなぜか。ドラマをより劇的にし、自分の役割を誇大に見せるためだろう。

 自分がどこの州を遊説中なのか忘れて、ニューハンプシャー州を遊説中にバーモント州を褒め始める。11月に77歳になる人物のご愛きょう(でもないが)といって、笑ってばかりもいられない。

 「バイデン・プロブレム」の処理。政財その他、同党エスタブリッシュメントが頭をひねっているのはそれである。

草野 徹(外交評論家)

 

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