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「離島防衛」の拠点に

馬毛島の基地化
 日米間の懸案の一つに、解決の道筋が見えてきたと言えよう。

 米軍空母艦載機の離着陸訓練の移転候補地となっている鹿児島県西之表市の無人島・馬毛島について、政府が地権者と売買契約を結ぶことで合意した。既に土地の取得を進めており、防衛省は1月、施設整備の現地調査を始めた。

 空母艦載機の離着陸訓練は、米空母に搭載される戦闘機が、陸上の滑走路を船の甲板に見立てて、離陸と着陸を繰り返すものだ。全長300メートル程度の甲板上での離着陸には、高度な技術が要求される。空母が日本に寄港して点検中、パイロットの練度を維持する狙いがある。

 1980年代までは主に厚木基地(神奈川県)で行われていたが、騒音被害が大きかった。米軍は91年、硫黄島(東京都)に訓練地を移したが、洋上では飛行中にトラブルが生じても退避する場所がない。米側は、馬毛島への移転を強く求めていた。

 現在、艦載機部隊が駐留する岩国基地(山口県)から硫黄島までは、約1400キロ・メートル離れている。岩国から馬毛島までは、400キロ・メートルの距離だ。

 訓練地の移転は、米軍飛行士の負担を軽減しよう。燃料費などコストの削減も見込まれる。日米同盟の強化に向けて、政府は着実に訓練移転を実現しなければならない。

 神奈川県の横須賀基地を母港とする米海軍第7艦隊は、西太平洋からインド洋に至る海域の安定を担っている。艦隊の中心となる空母の円滑な活動を支えることは、抑止力を維持する上で重要な意味を持つ。

 日中間では安全保障上の摩擦が強まっている。中国機が日本の領空に近づく事案が相次ぎ、航空自衛隊の緊急発進は増加している。

 防衛省は、馬毛島に造る施設を空自の基地として整備し、米軍の共同使用を可能にする方針だ。南西諸島では、自衛隊機が使用できる滑走路は沖縄県の那覇基地にしかない。陸海空が連携し、馬毛島を離島防衛の拠点として活用することを検討すべきだ。

 鹿児島県内の自治体には、騒音被害や環境への影響を懸念する声がある。馬毛島に近い種子島や屋久島は、自然環境が豊かな地域だ。基地整備に向けて、今後は防衛省と自治体の協議が必要となろう。

 政府は、基地を造る意義を丁寧に説明し、理解を得る努力を重ねなければならない。

 在日米軍の駐留経費に関する特別協定の交渉が今後、本格化する。トランプ米大統領は、日本に負担の増額を求めている。

 政府は、日本が十分な経費を負担していることに加え、米軍の訓練環境の改善にも取り組んでいる事実を丁寧に訴えていくべきだ。

夏川 明雄(政治評論家)

 

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