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政権移行へ作業本格化

米の次期大統領
 新型コロナウイルスの感染拡大もあって異例の展開をたどった米大統領選は予想を超える大接戦の末、民主党のジョー・バイデン候補(前副大統領)の勝利に終わり、共和党現職のドナルド・トランプ氏は在任1期で退陣することになった。新型コロナ禍の影響で郵便投票など期日前投票が増えた結果、激戦州で開票終盤までの共和党優勢から民主党の逆転につながった「消えた赤い蜃気楼」は、今回の大統領選の核心を示す言葉だろう。

 バイデン氏の勝因については米国内外のメディアや専門家が縷々(るる)分析しているため、繰り返さないが、筆者の感想をあえて記せば、米社会の分断をあおる言動を繰り返す大統領の再選は許さないという反トランプの大きなうねりが決め手となったのではないか。

 バイデン氏は来年1月20日の就任を前に政権移行の作業を加速させているが、4年前に逆転勝利を収めたトランプ氏の場合と決定的に違うのは、内政、外交・安保のいずれの分野においても次期政権の政策運営をめぐる不確実性が減り、予測可能性が高まることが期待できる点だ。米国第一主義を掲げ、既成のエリート政治打破を訴えたアウトサイダーのトランプ氏とは対照的に、バイデン氏は上院議員を6期36年、オバマ前政権で副大統領として2期8年在職したベテラン政治家であり、米政界の裏表を知り尽くしている。

 政治家出身のある評論家がバイデン氏について、「常識の通じる人が当選して良かった」と語っていたが、米大統領選を注視していた国際社会の大方の受け止め方もこの評論家氏の見方とそれほど変わらないように思われる。大統領就任時は78歳という高齢のハンデを抱えるバイデン氏に一票を投じた米国の有権者の間では、フェイクニュースと叫んで主要メディアを執拗に攻撃し、暴言を繰り返す大統領の言動に嫌悪感やストレスを抱える「トランプ疲れ」から解放されたいといった切実な声が多く聞かれたが、これと似た心境の世界各国の指導者も、一部の独裁者を例外として少なくなかったはずだ。

 バイデン氏は当選を確実にした後の事実上の勝利宣言の演説で、23万人超の死者を出した新型コロナ禍をめぐるトランプ氏の対応の是非が争点となったことを念頭に、「われわれの仕事は新型コロナを制御することから始める」と述べ、早速、政権移行を視野に入れた新型コロナ対策の専門家チームを立ち上げた。欧州主要国の首脳や菅義偉首相とも電話会談するなど、外交活動も本格化させている。新政権の顔触れについては、閣僚や要職ポストにはオバマ前政権を支えた人材に加え、民主党内の左派勢力や共和党からの人材登用も検討しているようだ。

 国務長官として有力視されるのは、オバマ前大統領の国家安全保障担当補佐官を務めたスーザン・ライス氏。国防長官には、ヒラリー・クリントン政権が誕生していれば国防長官になるとみられていたミシェル・フロノイ元国防次官の名前が挙がる。わが国を含め、米国の同盟国にとっても外交・安保政策の擦り合わせはスムーズに進む公算が大きい。

伊藤 努(外交評論家)

 

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