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イラン、米を先制非難

再び緊張加速
 イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官がイラクの首都バグダッドで、米軍無人機の攻撃で殺害(2020年1月3日)されてから1年を機に、両国間で再び緊張が強まっている。

 米軍がイランによる報復攻撃を警戒する中、ロウハニ同国大統領は12月30日の閣議で、トランプ米大統領の生命は「数日後に終わる」と警告した。

 ロウハニ氏のこの発言は、トランプ氏の「政治」生命のことを言ったと受け取れるが、イラン政府の英語への公式翻訳では、肉体上の生命を指したものとも受け取れるようだ。

 同大統領に続いて、ザリフ外相も31日、「トランプと彼の共犯者は、自国内でコロナウイルスと戦わないで、B52爆撃機や艦隊をわれわれの地域に派遣した。イラクからの情報によれば、米国は戦争の口実をでっち上げる陰謀を練っている」と主張した。

 2人の発言に先立つ20日、在バグダッドの各国大使館が集まる旧米軍管理区域(グリーンゾーン)に多数のロケット弾が撃ち込まれ、一部が米大使館の敷地内に着弾した。

 グリーンゾーンに向けたロケット弾による攻撃としては、10年以降最大規模(「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙)だった。

 同事件に対し、トランプ大統領は23日、「もしイランやその手先が米兵士を殺害したら、米国は反撃する」と報復攻撃の方針を明らかにしていた。

 米軍が30日に2機の戦略爆撃機B52を中東に派遣したのはそのためで、イランに対するメッセージだった。また、空母「ニミッツ」もソマリア沖で待機していた。

 しかし、AP通信によると、B52は同地域をその後すぐ離れ、「ニミッツ」も現在は米西海岸の母港に向かっている。

 米軍がB52と「ニミッツ」を同地域から移動させたのは、新たなメッセージだったろう。イランが挑発行為を行わない限り、米国はイランを攻撃する計画はないとの。

 にもかかわらず、最高指導者ハメネイ師に近い軍事アドバイザーのホセイン・デグハン氏の発言(31日)を読むと、米のイラン攻撃プランを既成の事実のように扱い、米国に警告している。

 「米国は(ソレイマニ司令官殺害の)報復を恐れて警戒態勢をとり、B52爆撃機2機をペルシャ湾に飛ばした」

 「同地域の米軍事基地はすべて、イラン軍のミサイルがとらえている。トランプにアドバイスする。新年を米国民の悲嘆の年にするな」

 そして、ザリフ外相も相変わらず「イランは戦争を望まないが、自国の国民、安全保障、死活的利益は断固として防衛する」といった対米発言を繰り返している。

 米軍が空・海の「軍事力誇示」を引き揚げた事実を考慮すれば、イラン側のこうした「警告」は逆に奇妙に映る。

 イランの指導者は自国から攻撃に出ることを計画しており、攻撃前にトランプ政権を〝先制非難〟しているのではとの指摘である。

草野 徹(外交評論家)

 

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